仕事

トヨタ生産方式 後編

こんにちは。

前回まではトヨタ生産方式(TPS)の2つの神髄のうちのひとつ、

売れる物を 売れるだけ 売れる時に できるだけ安く

について私なりの考察をしてきましたが、
今回はもう一つの神髄である

理屈に合ったことが合理化

について述べてみたいと思います。

本当の意味での合理化とは?

合理化という言葉はよく使われますが、
この言葉をうまく説明できますか?

生産現場においては
合理化=コストダウン
というような意味合いで使われていたりします。

企業経営における場合は
合理化=人員削減
だったりもします。

つまり、合理化という言葉は
余分な支出を減らす
という意味合いで使われることが多いのではないでしょうか。

ですが、大野氏の言う合理化とは

理屈に合ったこと、つまり当たり前のこと

です。

本書の中でも

合理化というのはアッと思うようなことではない

という記述があります。

まったく拍子抜けするほどにシンプルですし、
狐につままれたような気にもなりますよね。

完全に合理化された状態というのは非常にシンプルな状態である、
ということですね。
合理的な状態を説明するのにアメリカの工場を見学した時の感想が述べられています。

「なんだ、こんなの見る価値ないな」
と思うようなところが、実はかえってうまくいっておるんじゃないか。
合理化というのは結局理屈に合ったようにやるんで、
アッと思うようなことがない。
たとえば丸いものは転がすのが一番ラクだとか、
逆に重いものには下にローラーをつけておけば軽いじゃないかとか、
つまり当たり前のことなんだ

これが合理的な状態であると述べ、そこからさらに
一個しかいらんのに二個あるというのは、これはもう理屈に合わないじゃないか
という言葉を使って、「セットで作ること」を求めています。

つまり、いくら効率的であろうが、エンジンばかりたくさん作っても意味がない。
エンジン一個を作る間にデフ、ハンドル、フレームも一個ずつ作るべきであり、
それをうまくコントロールするのが生産管理である。
セットで考えた時につくり過ぎは非常に悪いことなんだ

ここでもつくり過ぎのムダを説いています。

「7つのムダの中で一番悪いのはつくり過ぎのムダである」
というのをどこかで読んだときに、
なぜつくり過ぎのムダが一番悪いんだろう?
つくり過ぎが無駄であることは理解できるけど、
一番かというとそうではなさそうで、他のムダだって同じくらい悪いのでは?
という感想を私も持ちましたが、この思想を理解すれば納得することができました。

「合理的」であることが「売れるものを売れるだけ売れる時に」を実現する手段であり、
「売れるものを売れるだけ売れる時に」を維持するためには「合理的」でなければならない、
ということであると私は解釈しています。

私の活動にどう生かされているか

いかがだったでしょうか?

「売れるものを売れるだけ売れる時に」

「理屈に合ったことが合理化」

この2つの思想こそがTPSの両輪であり、つねにここを原点にして
ジャスト・イン・タイムやかんばんなどの手段が生まれてきたと私は思っています。

それを理解せずにコストダウンの手段としてJITやかんばんを導入しようとしたり、
単に在庫を減らすことだけが目標になってしまうと道に迷ってしまうのではないかと思います。

今、私の勤務している工場では大きな変革期を迎えています。
こういう時こそ大きく変えるチャンスです。

今まではとにかく安く作ること、単価を下げることを主眼に置いて工場設計がなされていました。
設備の数を減らすこと、できるだけ設備を止めないこと、人を減らすこと、
そして一度に多く作ることが正義とされてきました。
それこそが安く物を作る最良の手段である、と。

少量多品種生産が当たり前のこの時代にフレキシブルに物を作るなんてできっこない。
単価さえ安く作れればリードタイムが長くなっても、在庫が多くなっても仕方がない。
いや、むしろ在庫は善なのだと言わんばかりに在庫が溢れかえっています。

だから売れるかどうかは別として大量に作って安くするのだ、という考え方。
これは本当に製造現場で働く人々の考え方を蝕んでしまっていると言っていいと思います。

そんな中、私は今、真逆のことを提案しています。

  • 必要がないなら設備は止めても良い
  • 在庫を減らすためなら設備は増やしても良い
  • 必要なら人は増やしても良い
  • 管理するための在庫であれば持っても良い

といった具合です。

私は信念をもってこの考え方を進めようとしており、
みなさんに理解してもらうために頑張って説明しようとしていますが、
私の説明が拙いこともあってか、なかなか理解してもらえません。

別に在庫を持てばいいじゃないか
セットで作る必要性がわからない
そんなにたくさん段取りをしていたら出来高が上がらない
結局どこで在庫を持つかだけの話でしょ
結局それで安くなるのか

などの意見や疑問が投げかけられます。

これからも私はこれらの疑問に答えられるような努力をしていかないといけませんが、
私はできると思っています。
むしろ、いろんな人からこういう指摘を受けるたびに、
これらを両立させるには私の考えている作り方を実現するしかない、
という思いが日に日に強くなっています。