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トヨタ生産方式 前編

こんにちは。

自己紹介から時間が空いてしまいましたが、
できるだけしっかりした記事を書きたいと思っているので、
ぼちぼちとやっていきたいと思います。

今回は本の紹介をしたいと思います。

けっこう古い本ですが、『トヨタ生産方式の原点』という本です。

 

これはトヨタ生産方式の生みの親である大野耐一さんが書かれた本です。

話し言葉を中心に書かれているので少し読みにくいところもあるかもしれませんが、
本人の口から語れるとびっきりの一次情報ですので、
誤解されやすいトヨタ生産方式の、まさに「原点」を感じ取ることができます。

では、いってみましょう。

トヨタ生産方式とは?

トヨタ生産方式(以下、Toyota Production System : TPS)は製造業に関わる人であれば
一度は聞いたことがある言葉だと思います。

この考えを使ったコンサルも多いためか、
どこの工場もこの考え方を取り入れようと取り組みます。

ですが、

うまく導入できない
導入しても成果が出ない

などという言葉もよく聞きますね。


「自働化」
「ジャスト・イン・タイム」
などの有名なキーワードもありますが、
これらのキーワードが何を表しているのかは意外と知られていません。

在庫は悪なのか?

数あるTPS関連のキーワードの中でも
「TPSでは在庫は悪である」
という概念がもっともインパクトがあるキーワードであり、
そして最も誤解されているキーワードではないでしょうか。

在庫が本当に悪であるのか、
そもそもトヨタ生産方式の神髄とは何か、
なぜ重要であることはわかっていながらうまく展開できないのだろうか、
ということを私なりに考察してみたいと思います。

TPSの神髄

結論から言ってしまうと、TPSの神髄とは次の2点に集約されると思います。

  • 売れる物を 売れる数だけ 売れる時に できるだけ安く
  • 理屈に合ったことが合理化

それぞれを詳しく見ていきます。

売れる物を 売れる数だけ 売れる時に できるだけ安く

これはTPSという概念を引き合いに出さなくても製造業における理想の姿だと言えるでしょう。

本書の中でも冒頭に述べられていますが、
あまりに当たり前のことであり、そしてあっさり触れられているだけなので、
その重要さに気づかずに読み進めてしまうと思います。

ですが、私としては、この言葉さえ知ったらあとは読まなくてもいいと思うくらいに
重要な概念だと思っています。

段取り替えのシングル化やかんばんだけがTPSではない

と大野氏も言っています。

7つのムダがTPSの考え方で取り上げられることがよくありますが、
その中でも作り過ぎの無駄が最大のムダであると述べています。

その理由は、作り過ぎるということは人件費や副資材の先食いであり、
金利負担、余計な倉庫管理や運搬作業がかかるなど、
計り知れない無駄が発生している、ということです。

私の勤める工場でもそうですが、
実際の現場では欠品を防ぐための大量の完成在庫や
長い製造リードタイムを吸収するための中間在庫が工場内にあふれています。

欠品さえ防げれば、ちょっとくらい在庫があってもいいよね、
という感じです。
実際にはちょっとではなく、大量に在庫が存在しているんですけどね。

在庫によって欠品は防げるかもしれませんが、
大野氏が言うように計り知れないムダが発生しています。

安く作る必要はない?

また、
できるだけ安くというのを先頭に持ってきてはダメ
とも説いています。

大量に同じ物を作れば安くなる
という考え方が製造業には根強く残っています。
そのため、できるだけ段取りの回数を減らして、
同じものを大量に作ろうとします。

たとえそれが売れるかどうかわからない物であったとしても、
現場の都合が優先されます。
まるでそれが正義であると思われていると言っても過言ではありません。

このような「大量に作れば安くなる」という誤解を防ぐために
在庫はダメだと言っているのです。

一方でトヨタ生産方式は必ずしも在庫は悪であると断定しているわけではありません。

別の著書になりますが、「トヨタ生産方式の逆襲」という本があります。
大野氏の右腕と呼ばれ、トヨタ生産方式の普及に尽力された鈴村尚久さんという方の著書です。

この著書の中でも「顧客のためには適正在庫を持つべきです」と述べられています。

一方では在庫がダメだと言い、反対では在庫は良いと言っている。

これが何を表しているかというと、
売れる在庫は持っても良い
ということであると私は解釈しています。

もう少し現実的な感覚で表現するとするならば
作り手側の都合で作ってしまう在庫は悪い在庫
お客さんのための在庫は良い在庫
という感じでしょうか。

TPSの中にあるたくさんのキーワードをたくさん勉強して、
かんばんやジャスト・イン・タイム、7つのムダなどを現場で実践する工場は多いと思いますが、
本当に大事なことを認識できていないから思ったような成果に結びつかないのではないでしょうか。

私の勤める工場でも日々、生産性向上のための取り組みが行われています。
TPSやTOCなどの言葉が飛び交っています。

ですが、私の感覚としては
売れる物を 売れる数だけ 売れる時に できるだけ安く
をスタート地点にせず、とにかく手段の実践にばかり気をとられてしまって
無駄な時間を過ごしてしまっているような気がします。

 

長くなってしまいましたね。

ということで、理屈に合ったことが合理化、については
後編で書かせてもらいたいと思います。