技術

なぜ製造現場においてなかなか自動化が進まないのか?

かこか
かこか

こんにちは。かこかと申します。

世間ではAIが大流行し、かなり以前からIoTだDXだと騒がれていますが、なかなか製造現場では自動化が進んでいないというのが私の印象です。

では、なぜ自動化が進まないのか?という点について、私なりの考察を書いてみたいと思います。

もくじ
  1. 仕事が増える見込みがない
  2. 人件費が安いから元が取れない
  3. 完璧主義
  4. やり方を変えたくない

 

仕事が増える見込みがない

そもそも自動化というのは効率化を目的としているわけですが、仕事が増えないのであればわざわざお金をかけてやる必要性は低いですよね。

自動車業界などでは特にそうだと思うのですが、どこの会社でどんな部品を作るのか、そしてどれくらいの量を作るのかが決められている場合がほとんどです。

仕事が大きく減らない代わりに、大きく増えることもほとんどありません。たまに増えたと思ってもいつ仕事が減るかわからない状態であれば、大きなお金を使って自動化しようという意欲が湧いてこなくても不思議ではありませんよね。

最近は円安や中国経済の不安から製造業の国内回帰が見られるようになってきていますが、どうせまた中国以外の安い国に移動していくだけでしょうから、以前のように日本の製造業が活況になる見込みは低いのではないかと個人的には思っています。

そうなってくると、やはり大きな投資をしてまでも効率化、自動化を進めようとしないのは仕方がないのかもしれません。

 

人件費が安いから元が取れない

国内と海外だと自動化に求める効果が違ったりもします。

国内の場合は主に人件費の削減であり、海外では品質確保だったりします。

日本の人件費が安くなっているとはいえ、発展途上国に比較するとまだまだ高いです。というか、海外の場合は日本でいう派遣労働者が認められていたりする国もありますが、そういう国の場合は人件費の高低がはっきりと分かれていたりします。

そういう国、環境と比べると日本の人件費はまだまだ高いと言えます。では、人件費が安い国であってもなぜ自動化を進めるかというと、品質を確保するためです。

日本の場合は転職する人はそれほど多くなく、定着率が高いため(あくまで特定の国に比べての話ですが)、技能の伝承が比較的やりやすいのですが、海外の場合は労働力の流動性が高いため、数年で大半の人が入れ替わったりすることもあります。私がいたインドネシアでは、2年以上(3年だったかな?)は同じ人を期間労働者として雇ってはいけない、というようなルールもあり、強制的に人の入れ替えがありました。ゆえに、なかなか技能の伝承や定着が難しいんですね。そのため、それを補う方法として自動化が求められることがあります。

一方、日本の場合は主に人件費削減が目的とされます。さきほども言ったように、なんだかんだで日本の人件費はまだ高いです。世間で言われる「日本の賃金は安い」というのは、あくまで平均的な話です。日本でもそうだと思いますが、賃金が高い人もいれば安い人もいます。製造業は他の業態に比べても多くの人を必要になるため、どうしても安い賃金層の人たちを雇う必要があります。ましてや、製造業の場合は人件費の高い欧米がライバルではなく、人件費の安い国がライバルとなります。そういう国と比較すると日本の人件費はまだまだ高く、削減の対象となります。

一方、自動化するのには大きなお金がかかります。設備も買わないといけないでしょうし、大きく工場のレイアウトも変えないといけないでしょう。そうなると、実は自動化投資を短期間で回収できるほど日本の人件費は高くない、というのが私の印象です。

高いと言ったり高くないと言ったりで混乱されてしまうかもしれませんが、高い低いというのは何を基準とするかによっても変わってきます。製造業を支える途上国に比べると高いが、自動化を進める(元が取れるかの判断する)には低い、というわけです。

今は人手不足の時代ですし、人口動態を見るとこの流れはしばらくの間続くことはほぼ確実です。人手不足になると人の取り合いになり、結果的に人件費が上がりそうなものですが、まだそこまでには至っていません。そのため、自動化投資をしたところでそれを回収するめどが立たない場合が多い、というのが私の実体験に基づく感想です。

これからの人手不足の時代に備えて今の内から自動化を進め、少ない人手でも生産性を維持、あるいは向上させられるように環境を整えていく必要があるとは思うのですが、そこに研修生という名目で海外から安い人件費を入れているので回収できる見込みが立たず、一向に自動化が進まないのです。

ですから、安易に海外からの研修生に依存せず、自動化を進めることで生産性を上げていくというのが正しいやり方だと思うのですが、目先の利益のことを考えるとそういうわけにもいかないのかもしれません。

もちろん、自動化を進めるには時間がかかるので、目先の操業を考えると海外研修生に頼らないといけないこともあるとは思うのですが、これから先も研修生に依存していけると思っているならば自動化は進まないと思います。日本は海外に比べてもどんどん人件費が下がっていくと言われているので、研修生だってそのうち来てくれなくなるかもしれません。その時にはいったいどうするつもりなのでしょうか?

日本なんか捨てて、海外の安い国に工場を移せばいいと思っているのであればそれに抗うことはできないのかもしれませんが、もっと高い視座から見下ろした時に国内での物づくりを維持していくことの大切さを感じているのであれば、今のうちに自動化を進め、少ない人手で多くの仕事がこなせるような生産性向上策を打っておかないと、海外に逃げるしか道はなくなるでしょう。

投資回収できる期間が短く、これから先も仕事が増える見込みがない。かつ、海外からの安い労働力を使えば当面はやり繰りできそう。こんな状態であるがゆえに、なかなか自動化が進まない、というのが多くの日本の製造現場で起きている事実だと思います。

 

完璧主義

ここまでは経済的、経営的な視点での理由を述べてきましたが、ここからは考え方による理由になります。

一つは完璧主義です。

自動化と聞けば、テレビで見るような、ロボットとコンベヤがつながり、最先端の設備を使うことで人がまったく介在せずとも製品が出来上がるような状態のことをイメージすると思います。

ですが、これを実現するのってかなり難しいんですよね。テレビを見ている人だけではなく、実際に工場を運営しているプロ(のはず)ですら、人がまったくいない状態じゃないと自動化じゃない、と思っている人はたくさんいるんです。

テレビでやっている最先端の工場を見ていても、どうしても自動化できずに人がやっている作業がいくつかあったりしますが、それを見るとちょっとがっかりした気になりませんか?テレビでは「人間でないとできない作業がある。やはり人間は素晴らしい」というような話の持って行き方をされますが(実際にそうなんですけどね)、工場を自動化する人にとっては人が介在してしまうということは技術が追い付いていないとか、最後までやりきれないとか、コストダウン効果が目減りしてしまうとか、何かとネガティブな捉えられ方をする場合が多いんです。

このネガティブな見方が実は想像以上に根強くて、人を完全にゼロにしないと自動化したことにはならない。それが実現できないのであれば、それは技術的に言うと失敗を意味し、自動化をする意味がない、という捉えられ方をしてしまう場合が多いというのが実態ではないでしょうか。

私個人的には、自動化というのは8割もできればかなり良い方だと思っています。残りの2割は人が介在してもいいんです。

なぜかというと、自動化できる作業というのは当然のことながら繰り返し作業と単純作業です。仕事というのは何でもそうだと思いますが、意識するしないに関わらず、8割くらいは繰り返しだったり誰でもできるような仕事だったりするのですが、残りの2割というのは状況に合わせて答えがかわるような仕事だったり、特殊な知識や経験がないとできない仕事だったりするわけです。

その2割の「人間でないとできない仕事」まで自動化しようとすると、一気に技術的難易度が高くなるんです。これから技術が発展していけば自動化できる範囲も今以上に広くなるのかもしれませんが、今の技術においては自働化が難しい作業、仕事もまだまだたくさんあります。完璧主義の環境だと、その2割の仕事まで自動化ができないのであれば、自動化する意味がない、と判断されてしまい、比較的簡単にできる8割の仕事の自動化までも認めてもらえなかったり、評価されない場合がほとんどです。

こういう考え方が支配的な職場環境だと、なかなか自動化しようという機運は高まってこないですよね。

やり方を変えたくない

考え方による自動化阻害要因のもう一つがこれです。

自動化をするにあたっては、これまでの仕事のやり方を変えた方がうまくいく場合が多いです。今までは人が作業をすることが前提として仕事のやり方が決められていたり、システム化されていたりしますが、そもそも人がこの作業をやらないと考えた場合、仕事のやり方やシステムの設計自体を変える必要があります。

中には仕事のやり方を変えようとせず、今あるシステム(人が作業をすることを前提としたシステム)をそのまま自動化しようとしているところもあります。その場合、自動化(もどきのことを)してみたけれど使いにくくて仕方がない、という結果にほぼ確実に陥ります。

私の部署でもシステムの自動化を進めているのですが、お客さんから良い評判をもらえない時があります。私から見ると、お客さんの方のやり方、考え方を変えてくれればこんなにも使いやすくて作業が楽になるシステムがあるのに、と思うのですが、一向に考え方を変えてくれないお客さんがいます。今の作業のやり方を変えずに自動化してくれないと困る、という具合です。

最近DX、つまりデジタルトランスフォーメーションという言葉をいろんなところで聞きます。私もDXという言葉の本当の定義は知りませんが、なんとなく、今の作業をデジタル化(≒自動化)するのがDXである、と考えている人がほとんどなんじゃないかと思います。

どうしてもなじみのある「デジタル」という単語の方に意識を取られてしまうのですが、私はDXのキモは「トランスフォーメーション」の方にあると考えています。つまり、仕事のやり方を変える(トランスフォーメーション)する、ということがDXのキモであり、「デジタル」はあくまで手段である、ということだと捉えています。デジタル化、IT化、自動化が先に来るのではなくて、仕事のやり方自体をもっと楽なやり方に変えるのが目的であり、そのための有力な手段がデジタルなんだよ、ということですね。

まあ、長年やってきた仕事のやり方を変えるというのは抵抗が生じるものです。それに合わせたルールやシステムも存在するので、それを変えるということは労力を必要とすることはよくわかります。それは私も今まで設備導入のタイミングで、どんなに便利なシステムを入れたところで現場作業者が「今までとやり方が違うからこれじゃ困る」「やり方を変えるためには上の人の承認が必要」ということを言って抵抗されました。生産現場に限らず、会社のシステムを変えようとする時の反発を何度も見たことがあるので、よく理解しているつもりです。ちょっと触って慣れれば大した問題じゃないはずなのに、変えることに対して抵抗をしたくなる気持ちはいつだって存在するとは思います(確かに、システムを変えてもむしろ仕事が増えることもあったりするので、文句を言いたくなる気持ちもわかるんですけどね)。

 

製造業の自動化を阻む代表的な要因を紹介してきました。

自動化って効率も上がるし、負担がかかる作業や危険な作業をしなくてよくなったりと、良いことが多いと思うのですが、実はそれを使いこなすには人の存在が欠かせないものだと思っています。もちろん、そこでまた人が増えたり仕事が増えたりしていたら本末転倒ですが、自動化すれば今まで必要としなかったそれらのシステムや設備をメンテナンスする人が増えたりもします。なので、自動化したところで人は劇的に少なくならないんじゃないか、というのが私の正直な見立ててです。

なんだ、そんなんだから自動化が進まないんじゃないか、と思われるかもしれませんが、人を減らす、コストダウンに注目をするからそういう考え方になるのだと思っていますし、この考え方こそが自動化を阻む最大の要因だと思っています。

もちろん、投資をする以上は元を取らないとダメです。利益を出さないとダメです。

それは前提としてありますが、今まで人がやっていた体に負担がかかる作業や危険な作業をなくせるというのはメリットではないのでしょうか?急な増産で人手が足りなくなり、走り回って人を集めたり、逆に仕事が減った時に泣く泣く仲間を切らないといけなくなったりする仕事を減らすことはムダなのでしょうか?

ましてや自動化のシステムは買ってきて終わりではありません。導入した後も思い描いた効果を出すためには多くの試行錯誤が必要になるでしょう。買ってきて終わり、というわけにはいかない技術なんです。

であれば。

いつかやろうじゃなくて、一刻も早く手を出さないと、いつまで経っても多くの人が暗い顔で危険と隣り合わせで作業をするような環境からは抜け出せないのではないでしょうか。

 

かこか
かこか

最後に自己紹介をさせてください。
私はこんな人です。

  • 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
  • 金属切削の生産技術歴 約20年
  • 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
  • インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級を持ってます
  • 高周波焼入れに関する本を書きました

自己紹介 はじめまして ご訪問いただきましてありがとうございます。 自己紹介させていただきます。 出...

もしこの記事を読んで良いと思われたようでしたら、
コメントをいただけると励みになります😊