仕事

余裕がないと衰退する きこりのジレンマ

この前、子供たちとマクドナルドに行きました。

最近はオンライン注文とかもできるみたいで、本当に便利な世の中になったよなぁ、
と思わずにはいられません。
家で注文しておいて、店に到着したらできたてをすぐに受け取れるなんて。

テレビでもやっていましたが、ピザ屋さんにオンラインで注文し、
店頭に取りに行こうとすると今そのお客さんがどこにいて、
あと何分で店に到着するから焼き始めのタイミングを間違わずに決められ、
お客さんの到着時には熱々のピザが準備されているなんてサービスもあるみたいですね。

ですが、システムがどんどん便利になる一方で、
人がシステムについていけていないと感じることが多くなってきました。

温かいうちに商品を受け取りたい!!と思ってオンラインで注文して
急いで店に取りに行ったのに店に到着してからも結構待たされるし、
自分より後から注文した人の方が先に商品を受け取ったりしていました。

その他、くら寿司でもタッチパネルで注文しても全然商品が出てこないことがしばしば。

そろそろ店の人に言おうよー、って言っても、
クレーマーみたいだからやめときなといつも冷静な長男に諫められる始末。

マクドナルドもくら寿司も、土曜の昼間とか夜という特別混んでいる時間帯での出来事だったので、
普段はオンラインの便利さを享受できるのであろうことはわかっているつもりですが、
暇な時はシステムがなくても人間だけで乗り切れるし、
忙しい時だからこそシステムが役に立つのでは?

この手のシステムというものは、その場その場の最適解を瞬時に見つけ出すという、
生身の人間には難しいとをいとも簡単にやってのけるのかもしれませんが、
それは物を作る人や設備というハードがあって初めて成り立つことですよね。

システムの指示する通りに動くことができればいいのかもしれませんが、
リアルな現場では設備は壊れるし、バイトは思ったように集まらないし、
人はいてもどんくさい人だったりするし、
天気が悪くて材料が届かなかったりするし・・・と、
トラブルの連続です。

経営層は、素晴らしいシステムを入れたのだから、人と設備は最小限でできるはずだ、
それができないのは現場のマネジメントに問題があると思いがちですが、
人と設備は多少の余裕がないとうまくシステムに追従することってできません。

製造業の世界では、三つの「ム」という言葉があります。

ムダ、ムリ、ムラです。

無駄があるから無理をする、無理をするからムラが出る。

ものづくりに携わる人であれば一度は聞いたことがある言葉だと思いますが、
私は必要な「余裕」さえも「無駄」と捉えられていることが多いんじゃないかなと思います。

「無駄」は削るべきだと思いますが、
本当は必要な「余裕」を削ってしまうと「無理」が利かなくなり、
納期遅れや不具合隠し、労働災害、過重労働などの「ムラ」が生じてしまう。

先日、安全に関する研修を受けてきましたが、
ルールを決めて手順書を作り、しっかり教育し、
設備は危険性がないかを評価し、
危険源があればただちに対策し、
ルールと教育が形骸化しないように定期的に監視し・・・

って教えられましたけど、こんなこと、余裕がなければ絶対できないですよね?

どこの会社も無駄を省くために、必要最低限の人や設備で業務をこなしていると思いますが、
マクドナルドで言うと、平日の昼間でもシステム追従できないほど余裕がなくなってるのでは?
と思います。

そうなったら時々やってくる土曜の昼間なんて、耐えられるはずもありません。
現場は疲弊し、もっと改善しよう、お客さんに喜んでもらおう、なんて思えるわけがないんです。

「きこりのジレンマ」
という小話を紹介します。

あるところに一生懸命に木を切っている木こりがいました。
木こりは一日中がむしゃらに気を切っていました。
ある日、通りかかった旅人がその斧を見て
「刃がこぼれてボロボロになっているじゃないか。
刃を研いであげればもっと簡単に気が切れるようになるよ」
と教えてあげたところ、木こりは
「わかってはいるんだけど、気を切るのに忙しくてそれどころじゃないんだよ」
と答えましたとさ。

いかがでしょうか?
皆さんも木こりのような経験、身に覚えがあるのではないでしょうか?

みんなわかってはいるんだけど斧を研ぐことをしないんですよね。
研ぐ方法はあるのに、研ぐことをやらずにその場をやり過ごすことも多いと思います。

一方で私のような管理職の立場からすると、斧を研がないことを木こり(=部下)だけの
責任であると断じることはできません。

研ごうとしない人がいるのも事実ですが、研げない環境、研ぎにくい環境を
作ってしまっているのは管理職の責任でもあるからです。
研ぐ方法を教えてあげるのも、時には管理職の仕事でしょう。

自分が木こりのような考え方になってしまっていないかは誰しもが常に考えないといけないことですが、
今目の前にあるモノやコトが「無駄」なのか「余裕」なのか、
それを適切に判断することこそがマネジメントの責務ではないでしょうか。