仕事

80年前から変わってません 失敗の本質を読む

こんにちは。かこかと申します。

最初に簡単な自己紹介をさせてください

  • 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
  • 金属切削の製造技術歴 約20年
  • 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
  • インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級持ってます
  • 小さくてもいいからガッツポーズができる人生を目指しています
  • You Tubeのストリートピアノのやつが好きです

https://www.shibakin.com/self-introduction/

今回は本の紹介をしたいと思います。

「超」入門 失敗の本質  鈴木博毅 著


この本のベースは失敗の本質という本です。


この本は太平洋戦争で日本軍が負けた理由を組織論、経営論から分析している本で、
ベストセラーになっている名著です。

ですが、内容が難解なので多くの人にとってはとっつきにくい本です。
今回紹介させていただく「超」入門 失敗の本質は、著者の鈴木さんが読みやすくアレンジしてくれた本です。

どちらから先に読んでもいいと思いますが、
かく言う私はまだ失敗の本質を読んでいません。
本はだいぶ前に購入したのですが、積読状態になっています。

「超」入門の方を読んだので、近いうちにそちらも読んでみたいと思います。

  1. 簡単に言ってどんな本?
  2. 戦略とは「目標達成につながる勝利を選ぶこと」
  3. 上司の最大の武器は部下の話を聞くこと
  4. 視点をずらしてみる

簡単に言ってどんな本?

冒頭でも書きましたが、この本は太平洋戦争の敗因を分析した本です。
当時の日本軍の組織としての脆弱さをわかりやすく解説してくれています。

太平洋戦争では竹やりでB29を落とす訓練をしていたとか、
『欲しがりません勝つまでは』
などのスローガンが有名ですが、
とにかく非合理的な戦い方を国民に強いていたことはすでにご存じの事と思います。

そのような軍を統括する上層部の戦略のまずさや組織運営のまずさを解説してくれていますが、
それももう80年も前の話、もう今の時代はそんなことはないから参考になることなんてないのでは?
と思われる方もいるかもしれません。

ですが、残念ながら当時の組織風土はほぼ昔の形のまま、今の日本社会でも根強く残っています。

サラリーマンの方ならこの本を読むと
あるわー
とか、
俺も経験したことあるわー
などという感想を皆さん抱かれると思います。

You Tubeでも多くの解説動画が出ていますね。

本書の内容の説明としてはこちらの方が上手に話してくれているので
私の下手な説明を読むよりはそちらをご覧になってもらった方がいいかなと思います。

一通りのチャンネルを見ましたが、どこのチャンネルもおおよそ同じことを説明しています。
その中でもこの2つは上手にまとめているんじゃないかと思います。

サラタメさん
https://www.youtube.com/watch?v=och4WBCWjLM

巨人の肩にのるチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=kVw_ZBEXXzM

すみません、人のふんどしで勝負させてもらいまして。

ですが、すでにあるものは利用させていただきつつ、
本ブログでは、私がその中でも重要だと思った3つの項目について、
私の経験を織り交ぜながら私にしかできない解説で紹介していきたいと思います。

戦略とは「目標達成につながる勝利を選ぶこと」

本書のだいぶ頭の方に出てきますが、この本を一言でまとめるとするならばこの言葉になると思っています。

本書では例として、日本軍はとてもたくさんの島を占拠して小さい勝利を積み重ねたのに対し、
アメリカ軍はいくつかの島しか占拠しなかったというエピソードを挙げています。

ですが、アメリカ軍は全体の勝利を収めるために重要な島だけを占拠したので、
最終的に勝利を収めることができました。

日本の場合はそれが全体の勝利に対して重要かどうかではなく、
ただ単に勝利を重ねて(みせかけの勝利と言っていいでしょう)占拠する島を増やすことが価値になっていたわけです。

戦略というものが目標達成につながる勝利を選ぶこと定義するのであれば、
日本軍は目標達成につながらない勝利をたくさん挙げていたということになります。

練習試合から全力でやり過ぎて、本番の公式戦で力尽きて勝てない、みたいなものですかね。

つまり、どれを取ってどれを取らないかを決められていないということです。
取捨選択ができず、なんでも欲しがっているということですね。

現代の会社でもこれと同じことが頻繁に発生しています。
私の会社での話を紹介します。

海外に生産設備を入れるプロジェクトの計画を立てている時の話です。
このプロジェクトは大きなお金が動く大きなプロジェクトでした。
それだけ注目度も高く、普段話をすることがないような経営層にも判断を求める必要がありました。

ですが、上層部はまったくビジョンを示そうとしないんですね。

納期は守れ
技術的なレベルアップも必須
投資額ももっと安くしなさい
コストも今より必ず安くしなさい

何度説明してもそれしか言わないんですよね。

どういう現場を作りなさいとか、こんな風にしたいとか、
ここが重要だから気を付けろとか、そういうことは一切言わない。

とにかくありきたりなことしか言わず、すべての項目(戦場)を最高得点でやり遂げなさい(占拠しなさい)、
という指示なんですね。

戦略とはそういうものではないのでは?
と常に私は思っていました。

もちろん、さきほど挙げた条件はどれも大切なことです。

ですが、どれを最優先すべきかを決めず、どれも取ってこいというのは
何も指示をしていないのと同じことですよね。

それに常に下(つまり、私)からの意見を待つんですね。
私が言ったことに対しては何かしらの反応をしてくるんですが、
自分たちがどう思う、というようなことはほとんど言ってくれませんでした。

それでいて、なんでそんなに金が必要なんだ?とか、
そんなに金をかけて本当に売れるのか?
と私に聞いてくる始末。

あきれてしまいましたが、こんなことはどこの会社でもよくあることじゃないでしょうか。

私はこの項のページを読んで、真っ先にこの時のことが頭に浮かびました。

上司の最大の武器は部下の話を聞くこと

最悪のリーダーシップとは、
「この人にはもう、何を言っても無駄だ」
と部下に思わせてしまうケースでしょう。

優れたリーダーとは、組織にとって「最善の結果」を導ける人であり、
自分以外を無能と断定する人ではないはずです

本書の中に出てくる文です。

その通りだよなぁ・・・
って皆さん思いますよね???

以前から私のブログによく出てくるパワハラ上司のPさんがまさにこれ。

上層部から言われているのか知りませんが、たまに個人面談の時間がありました。
ですが、そういう場でも自分のことばかり話して私が話す時間はほとんどありません。

そして、私が困っていることを訴えると
「それはお前の仕事。それができないならマネージャーは要らない」
と何度も言われました。

いやいや、俺の仕事かもしれんけど、部下である俺が困ってるなら
支援するなりアドバイスをするなりするのがお前の仕事ちゃうんかい

そう思っていましたが、ああ言えばこう言うという感じで
いつも堂々巡りの末、必ず私のところにブーメランのように戻ってきました。

まさに、ああ、この人には何を言っても無駄なんだ、と思いましたね。

本書の中でも出てくるんですが、日本軍の悪いところとして、
上層部が現場を見ようとせず、また、現場からの意見を聞こうとせずに、
現場を知らない上層部からの一方的な指示がまかり通っていたということでした。

そのため、指示がハチャメチャな物になるし、
そのせいで本来失わなくてもよかったたくさんの命が失われてしまいました。

どこかの映画じゃないですが、
まさに事件は現場で起きているんだ!!ですよね。

製造業では
現場・現物・現実
という言葉があります。

これらの頭文字を取って3現主義と言われています。
これに原理・原則を加えて5ゲン主義なんていう言葉もありますが、
要は現場を見なさいという戒めの言葉です。

この言葉が好きな経営層は大勢いると思います。

みなさん忙しいと思うのでなかなか現場に来れないのは理解できるのですが、
そんな中でもこの言葉の通り、現物に来る偉いさんはいると思います。

ですが、せっかく現場に来ているのに、でっかいスクリーンを使った報告を受けるだけなんですね。

パソコン上で説明を聞いてあーだこーだ話をして、結局現場に行くのは数分だけ。

そして何より、現地の人の話をあまり聞かないんですよね。

聞くのは報告だけ。
そんなもん、報告なんて本当のことなんて言わないに決まってるのに。

現場に行くのは当然のこととして、現地の人の話を聞く
(できれば役職が付いてない人の話を聞くのが良い)、
困っていることの1つも聞いてあげて、その場で解決策を決めるくらいのことをしないと
それはお役人さんの現地視察(という名のカラ出張)となんら変わらないとすら思います。

視点をずらしてみる

本書の中でも何度も出てくるのが、日本の電機産業です。

かつて世界を席巻したのに、高性能を追及するばかりでお客さんのニーズが変わっていることをつかめず、
あっというまに他の国に抜かれて今やかつての華やかさは見る影もない。

この話はいろんなところで語られているので皆さんもご存じかと思います。

要は昔からの指標を大切にし過ぎて、新しい指標を見つけることができないんですね。

本書の中では、ゼロ戦を引き合いに出して説明されています。

当初その高い旋回性と高度に鍛えられたパイロットの腕により連戦連勝していました。
ですが、単独で戦うことを避けて複数の戦闘機で戦うというアメリカ軍の新しい戦法により、
最後の方はゼロ戦も無力化していったとのことでした。

日本軍はゼロ戦を高性能化することと、パイロットを極限まで鍛えるという指標から
抜け出すことができなかったということですね。

私の経験で置き換えると、サイクルタイムの話があります。

サイクルタイム(以下、CT)というのは製造業ではもっとも重要な指標の1つですが、
簡単に言うと1つの設備が1つの製品を作り終えるまでの時間です。

CTが早ければ早いほど1日の中でより多くの製品が作れるので、
コストダウンをすることができます。

私たち製造技術者はこのCTを短くするために技術を磨き、作り方を変えたりして
日々努力をしています。

ですがこのCTというのはやっかいなところがあり、
頑張ったわりに効果につながらないことがしばしばあるんですね。

たとえば、1つの製品を複数の設備を使って分担して作ったりする場合です。

最初にAの設備を形を整え、次にBの設備で仕上げをし、Cの設備で洗浄をして、
Dの設備で組み立てる、というような場合です。

この場合、A~Dの設備がすべて1分で終われば、1分ごとに1つの製品が出来上がることになります。

ですが、技術者が頑張ってBの設備のCTを1分から30秒に短縮したとしましょう。
それこそ毎日夜遅くまで頑張ってCTを短くしました。

ですが、おわかりだと思いますが、Bの設備だけが早くなっても、
他の設備が1分のままだと、製品は1分に1個しかできないのは変わりません。
Bの設備は早く終わっても残りの30秒は止まっているだけなんですね。

このように、どれだけ頑張ってもその効果がまったく無駄になってしまう危険性があるのが
このCTという指標なんです。

ですが、このCTという指標はとてもわかりやすい努力の結果になるんですね。

私はこの設備のCTを半分にしました!!

と報告されると、だいたいの偉いさんは
良くやった!!
と褒めます。

そして、もっと努力してCTをさらに下げなさい、
という指示をするのがよくあるパターンです。

本当であれば、Bだけやっても意味がないから、
他の設備もCTを下げられないのであればBのCT削減に割く時間を他の仕事に振り分けなさい、
という指示をしてあげるのが上司の仕事であると私は思っています。

昔はいざ知らず、今は物の作り方も複雑になっていますし、
それぞれの製品の特性に合わせた作り方をしないと、いくらCTを下げたところで
本当に意味での生産性向上にはつながらない場合が多いんです。

それなのに、CTこそ命と言わんばかりにCT削減を指示してくる上司は今も確実に存在します。

本当の効果が出ないのに夜遅くまで仕事をし、ごまかし半分でCTを下げて上司の叱責から逃れる。
CTなんか下げなくたってロボット化してあげれば簡単に生産性が上がることもあるのに、です。

今まで重要だとされてきた指標から少し目をそらしてみるということが怖いのだと私は思っています。

簡単にやれる仕事に価値はない。
お金をかけてやるんだったら誰でもやれる。
新しいやり方なんて本当に効果が出るかわからない。

そういう考え方がいまだにまん延していると言わざるを得ない状況です。

日本の製造業は真面目で勤勉に鍛錬を積み重ねています。

ですが、もうこの考え方はだいぶ通用しなくなってきていると現場の人たちは感じています。

上層部の人たちも今までの指標から少し目をそらしてみて、
新しい指標の価値を認めてもらいたいと思っています。