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これだからやめられない 生産技術の良いところ 後編

かこか
かこか

こんにちは。かこかと申します。

前回の続きで生産技術の仕事の良いところを書いていきます。

前編をまだ読まれていない方はこちらもどうぞ。

これだからやめられない 生産技術の良いところ 前編 前回の記事では生産技術の悪いところを書きました。多分に私の主観も混じっていたかと思いますが、生産技術という仕事をしてきた人には多...

 

もくじ
  1. チャレンジしやすい
  2. 答えが明確
  3. 経営を学べる

 

チャレンジしやすい

生産技術の仕事をやっていると開発者・設計者とやり取りすることが多いです。そんな中で思うのは開発陣は思ったようにトライできないということです。

製品開発となると市場で問題が起こるととんでもないことになりますから、危ない橋を渡るわけにはいかない。ゆえに行動がどうしても保守的になり、チャレンジすることを好まない傾向にある気がしています。

それに比べて生産技術はたくさんのチャレンジをすることができます。大きなチャレンジはお金がかかるのでなかなかできませんが、現場改善レベルのチャレンジをするハードルはかなり低いです。

たとえば、私の関わっている機械加工の分野であれば、工具の改善が代表例だと思います。製品を作るためには製品を削るための工具が必要になるのですが、たくさん削れば削るほど摩耗してきます。この工具の寿命をできるだけ伸ばし、1つの工具でたくさんの製品を作り出すことができればコストを安くすることができます。

工具は専門のメーカーさんが開発、製造、販売されている場合がほとんどですが、彼らが売り込んでくる工具の性能を生産設備を使って評価することができます。性能評価トライの状況にもよるとは思いますが、工具を受け取ったその日のうちにトライを開始し、その日のうちに結果を得ることもできます。

また、生産現場の動作改善もチャレンジの1つです。作業者は決められた道具を使い、決められた作業を繰り返しています。できるだけ作業者が楽にできるように、間違わないようにと考えられて動作が決められているわけですが、中にはやりにくい作業があったりします。それを道具の構造を変えたり、製品の流し方を変えたりして作業者がやりやすい状況に変えていきます。

これも状況によって異なりますが、うまくいくとコストダウンにつながったり品質を向上させたりすることもできます。そして何より、作業者から「君のおかげで作業がやりやすくなったよ。ありがとう」という感謝の言葉をかけてもらえることもあります。

毎日何十、何百という製品を作るわけですから、実験をするにはもってこいの環境です。うまくいかなければ元に戻せばいいだけですから、それほど大きなリスクを背負うことはありません(もちろん、変な製品が市場に流れてしまわないように、注意深く監視する必要がありますが)。製品開発だとそんなわけにはいきませんからね。

さきほどは大きなチャレンジはなかなかできない、と書きました。確かに大きなチャレンジはお金がかかるのでそれほどチャンスは多くないのですが、できないわけではありません。前編でも書いた設備を更新するタイミングで、今までやってこなかった工法を用いることで今までよりもずっと安く、高品質な製品を作れることもあります。

このように、その気になりさえすれば小さいながらも多くのチャレンジや試行錯誤を日々の仕事の中に織り込むことができます。これは技術者としてとても恵まれた環境だと思います。

 

答えが明確

これは、当たり前過ぎて何も感じないかもしれませんが、何気にとてもありがたいことだと思っています。生産技術、いや、工場でのものづくりというのは答えがとても明確なんです。

つまり、図面通りの物を安定して生産する。これ以上の価値はありません。工場にいる人全員がこのゴールに向かって努力をするわけです。

私は工場での仕事しか実践経験がないのでここは想像でしかありませんが、製品を売る営業の仕事であったり、どんな製品を作るかを考える製品企画のような仕事の場合、人によって様々な答えや考えを持っていると思います。

よく言われるのが、熱いコーヒーを飲みたい人と冷たいコーヒーを飲みたい人がいる場合、両方の希望を叶えようとするあまり誰も望まないぬるいコーヒーができてしまう、といった状態だろうと想像します。つまり、何が正解かわからないので自分が正しい方向に向かっているかを見失ってしまうことがあると思うのです。

同じ技術系の仕事であっても、製品開発や研究の人は「本当にこれで良いのだろうか?」と迷いながら仕事をしているのでは?というのが私の印象です。なぜならお客さんに喜んでもらえる商品というのは売ってみないとわからないからです。売ってみないとわらかない以上、開発や研究をしている内容が正しいのかどうかは誰にも断定できないと思います。ゆえに迷いが生じるのではないでしょうか。

それに比べて工場のゴールは明確です。図面通りの物を作る。それが唯一のゴールです。

ちょっと気を利かせて図面と違う物を作っておきましたー、なんて許されるはずがありませんし、図面以外の物を作ることはあり得ません。図面を好きだ嫌いだと言う人はいません(作りにくい図面、作りやすい図面はありますが)。

俺はこの図面は作りたくない、なんていう人はいませんし、みんなが図面通りの物を安く、早く作ることをゴールにして働きます。工場にいる人たち全員がそのゴールに向かって活動するわけですから、全員が同じ方向に向いていると言っていいと思います。

これは研究系の部署に来て改めて感じたことでもあります。

今私は工場の第一線を離れて研究(というほどでもないですが・・・)の部署に所属しています。研究の仕事というのはなかなかに孤独なものです。自分たちのやっている仕事が本当に会社の利益に結びつくのかどうかがわかりません。一生懸命やってもうまくいくかどうかわからないこともよくあります。というか、基礎研究に近いほど成功の確率は下がっていくでしょう。そんなことやって何になるんだ、とか、工場が一生懸命稼いだ金を使って遊んでいる、などと言われることもあります。

もちろん、それでも将来の飯の種を見つけるためには研究をする人たちが必要だと私は思っていますが、工場の人たちは自分たちの仕事が役に立つのかどうか、という不安を感じることはほとんどありません。むしろ、自分たちの作った製品こそが会社を支えている、と自負しているくらいでしょう。このように、自分たちの存在意義を見失うことはほとんどないと思います。

一方で自分たちのやるべきことが明確であるからこそ考えることをしないという負の面もあります。

現場の経験を生かして研究の分野で活躍してもらいたい、という理由で工場から研究部署に異動になる人がいますが(私もそのうちの一人だと思います)、経験豊富なベテランであっても、自由に仕事していいよと言われると、何をやっていいかわからないと迷う人が意外と多かったりもします。

そういう負の面があるにはあるのですが、答えが明確であるというのは生産技術のメリットの一つであると私は思っています。

経営を学べる

これも私の思い込みかもしれませんが、工場で仕事をしていると会社経営を学ぶことができると思っています。

開発部署や研究の人も当然お金の計算はしますが、技術ごとの採算であったり、製品ごとの採算だけであることが多いと思います。全員がそうであるとは言いませんが、自分の担当しているモデルが売れればそれで良く、他のモデルはどうでもいいと思っている人もいると思います(実際にそのようなことを言われたこともあります)。

もちろん、仕事の管轄範囲がそういう風になっているので個人個人が悪いというつもりはありませんが、工場はそういうわけにはいきません。複数の商品を同じ設備で作ることも普通にありますし、古い商品も新しい商品も同等に扱わないといけません。売れ筋商品かそうでないかは関係ありません。

売れると思って大々的に生産体制を整えたのに全然売れなかったり、売れないと思っていたのに想像以上に売れてしまったりすることもありますが、その都度対応する必要があります。商品に季節性がある場合などは、それに合わせてものづくりの体制を整える必要があります。

また、工場では実際にお金を払って材料や資材を購入し、それを使って物を作り、在庫管理をし、製品を売ります。直接的にそこに関わることはないかもしれませんが、当然常にこれらのことを考える必要があります。おそらくですが、技術系の職場でこのようにお金の流れや製品の流れ、つまり経営のことを考えながら仕事をするところは多くないのではないでしょうか。

実際に開発担当者が「在庫なんていくらでも持てばいいじゃないか!!」と大声で言われたり、「償却費って何?」と質問されることも実際にありました。これらは新人ではなく、各職種のリーダーとして活躍していた人達の実際の発言です。

その職種によって必要とされる知識は違います。私だってその職種では知ってて当然のことを知らない、なんてことはたくさんあると思いますが、このような会社経営の基礎となる事柄に日常的に接し、学ぶ機会があるのが生産技術なのです。

 

以上が生産技術の良いところです。

他にももっと良いところがあると思いますし、私の思い込みで書いているところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

前編でも書きましたが、私は入社当初、生産技術の仕事がいやでいやでしかたがありませんでした。何度か転職活動をしたこともあります。

ですが、今となっては口だけは達者でも本当は弱弱しかった自分をよく鍛えてもらえたと思いますし、今ではここで書いたようなことを身に付けることで、なんとか今も仕事をやりくりできています。

生産技術は学生には人気のない職種だと思いますし、思っていなかった配属先として生産技術の仕事を始める人もいると思います。そんな人にはこの記事を読んでもらって、生産技術もそんなに悪い職種ではないよ、ということを理解してもらえれば本望です。

 

かこか
かこか

最後に自己紹介をさせてください。
私はこんな人です。

  • 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
  • 金属切削の生産技術歴 約20年
  • 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
  • インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級を持ってます
  • Twitter、noteもやってます https://twitter.com/Shibakin_2019
  • noteで高周波焼入れに関する記事を書いています
高周波焼入れについてのノウハウをnoteで公開します Twitterでも配信させてもらっていますが、高周波焼入れについての記事をnoteで書かせてもらっています。 すでに大部分...
自己紹介 はじめまして ご訪問いただきましてありがとうございます。 自己紹介させていただきます。 出...

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