こんにちは。かこかと申します。
前編に続いて工場勤務、生産技術が嫌われる理由を書いていきたいと思います。
前編をまだ読まれていない方はこちらもどうぞ。
- 生産技術のいやなところあるある 後編
- 生産技術の意地
生産技術のいやなところあるある 後編
⑤ ブルーカラーとホワイトカラーの両方のルールに従わないといけないのに、どちらのメリットも享受できない
前編で述べてきたような表面的なデメリットだけでなく、工場が近くにあるがゆえに変な縛りを受けることが多いです。会社としてはホワイトカラー枠の職種であるのにそのメリットをほとんど享受できないと感じることも多々あります。一方でブルーカラーのメリットも受けられないという、なんとも中途半端な位置づけなのが生産技術です。
これは挙げればキリがないのですが、思いついたことを書きたいと思います。
服装については前編で書きましたが、他にも食べ物があります。
事務仕事の職場では小腹がすいた時に軽く何かをつまむこともあると思いますが、一時、私の事務所ではそれが許されていませんでした。理由は、生産現場で働く人が食べられないのだからお前らも食べるな、というものでした。
事務所に軽食の自動販売機がある会社もあるくらいなので、常識的に考えて軽くつまむ程度なら許されるはず。ですが、それも工場から禁止されました。
あとは就業時間。
これも会社のルールとしてはフレックス勤務が認められているのですが、フレックスが認められていない工場内で働いているため、特別なことがない限りは使える雰囲気ではありません。もちろん、ルールで認められているんだからフレックスを強行することもできますが、設備が止まっててみんな困っているのにあいつはのんきにフレックス勤務をしている、と言われることは間違いないと思います(家庭の用事で単発でフレックスを取ることはできるでしょうけど)。
あと、うちの会社の場合ですが、工場の稼働時間とそれ以外の稼働時間が異なります。工場は現場作業者に合わせて午前と午後にきっちりときまった時間の休憩があります。その休憩時間は就業時間としてカウントされません。その休憩時間と昼食の時間を除いたうえで1日8時間の拘束時間となります。
一方工場以外の職場では、午前と午後の休憩時間は設定されていません。はっきりとした理由はわかりませんが、間接部門なんだから休憩時間をはっきりと決めるより自分たちで取れる時に取ればいい、という考え方なんだろうなと思います。
ですが、休憩時間が設定されていないにも関わらず、普通にたばこを吸っている人がいました。というか、むしろ休憩時間が設定されていない間接職場の方がたばこを吸いに行く頻度が高かったです。
最近は喫煙自体が認められていないことが多いのでそういうこともなくなったかもしれませんが、休憩を取っている人は確実にいると思います。
俺は会議ばかりで休憩を取る暇がない。だからずっと仕事をしているから休憩時間なんてなくたっていい、という方もいると思いますが、それは生産技術も同じです。基本的には生産技術も間接業務なので、ここで休みます!!と言って固定された休憩時間を設定することは難しいのです。だから、休憩時間関係なく仕事をしている人も大勢いました。
ちなみにうちの会社の場合だと、午前と午後の休憩時間を入れないとすると毎日15分、生産技術の拘束時間の方が長くなりますので、やらしい言い方をするとこれだけの時間タダ働きをさせられていることになります。
この15分のタダ働きを入社から退社までの40年間続けたとすると、合計で1.25年に相当する計算になります。配属先が違うだけでこれだけの期間タダ働きをすることになると考えると相当なロスであることがわかります。
もちろん、これは「休憩時間をしっかり取らなかったら」という仮定の上での計算なので常に誰にでも成立するものではありませんが、現実的にはこれくらいの損をする人がいてもおかしくないルールになっているということです。
また、労働組合の活動も不公平だと感じました。
要は工場の労働組合の活動は生産現場で働く人の環境が良くなるようなものが中心になります。人数が多いのでそちらが重視されるのは理解はできるのですが、たとえば増産などによって生産現場の人たちが忙しくなったら会社に対応を訴えるのに、慢性的に残業が上限に張り付いている生産技術のことは特に取り上げられません。工場の労働環境が良くなるように訴えることはあっても、生産技術の事務所の環境が良くなることはほとんどありません。
一方で間接部門の方はたとえば労働時間の自由度を増やしてほしいなどの要求を会社にするわけですが、前述のとおり工場の勤務時間に合わせないといけない生産技術は、その要求が実現したところで何のメリットもないわけです。
このように、自分たちがブルーなのかホワイトなのかわからないような環境だったので、
「俺たちは両方合わせたスカイブルーだね」
などと自虐的に笑うこともありました。
こういう不公平をホワイトカラーの職場で働く人に話をしても、
「そんなのルールで認められているんだから勝手にやっちゃえばいい」
とか、
「それがイヤなら辞めればいい」
などと言われることもあります。
確かに理屈的にはそうなのかもしれませんが、権利ばかりを主張していると仕事が円滑に進められなくなるという現実があります。また、特に努力もせずにただただホワイトカラーの部署に配属されただけの人たちに「イヤなら辞めれば?」とか「労働組合に訴えれば?」と言われると、ムカっとすると同時に、絶望的な不公平を感じてしまうのは無理もないことだと私は思っています。
⑥ 会社のお荷物として扱われる
最後に、これです。生産技術としてもっとも憤りを感じるのがこれですね。
これは会社によって大きく異なると思います。特に専業でものづくりをやっている会社ではそんなことはないかもしれませんが、製品開発、販売までやられている会社の生産技術あるあるかなと思います。なので、俺のところは違う、と思われる方は「ふーん、そうなんだ~」くらいに思ってもらえればと思います。
私は経営のことはよくわかっていませんが、会社にとって工場というのは大きな固定費になると思います。ファブレスという形態が持て囃され、自分たちのところでものづくりの腕を磨くという考え方が古臭いと言われる昨今、工場が会社経営のお荷物として扱われることがしばしばあると私は感じています。
つまり、社内で工場を持たずに外部の工場から買ってくればいい、という人が絶えないということです。そうすれば売り上げの増減に合わせて買ってくればいいので、売り上げが下がったとしても固定費が重荷になることはない、という理屈ですね。
私が所属していた工場でも、事あるごとに外注から買ってくればいい、と言われることがありました。ボロボロの設備を更新したい時や、増産対応のために新しいラインを増設しようとする時など、常にこの言葉を言われました。外から買ってくればいいのになんで大金をはたいて投資しないといけないのか?内製化する意義は何なんだ?と。
私は部品を外から買ってくるということに反対をしているわけではありません。もし会社の経営層がそれが良いと思うならばそうすればいい。ただ、内製をすることによる有形、無形のメリットがあるからこそ、社内で内製しているはずなんです。
たとえば、外から部品を買ってくるにしても、その目利きができないと性能や金額が妥当なものであるかを判断することができません。
以前、調達の方と海外の工場に訪問したことがあります。
目的はその工場と取引を開始するにあたって、きちんとこちらの要求した物を提供するだけの能力があるかどうかを確認しにいくことでした。
当然のことながら私はその工場の良い点、悪い点を具体的に挙げ、そのうえでこの会社が取引するに足りるかどうかを判断し、提案しました。一方で調達の人は、「自分たちは工程を見学することしかできず、良し悪しを判断することができない。一緒に来てくれてよかった」ということを言っていました。
この調達担当の方は正直にそのように言ってくれたので大したもんだと思いましたが、手前みそながら生産技術の知見がないとまともな物をよそから買ってくることもできなくなるわけです。要求が高くなればなるほど、その工程を知らないことには良し悪しを判定できないのです。
このようなメリットは日常では認識できませんが、確実に会社に貢献できる経験であると思っています。このような普段は目に見えないけど長い目で見た時の効果をしっかりと考察せずに、何でも外から買ってくればいいと言うのはまったくもって馬鹿げた発言だと私は思っています。
生産技術の意地
ここまで生産技術が嫌われる理由をつらつらと書いてきましたが、最後にこの仕事を長くやってきた人間として物申したいと思います。
私は、ものづくりは会社経営にとって目的にはなり得ない、という風に考えています。
なぜそう考えるかというと、いくら工場で効率的に安く物を作ったところで製品が売れなければ意味がないと思うからです。会社にとってはあくまで物を売ることが目的であり、効率的に安く作るというのはあくまで手段でしかないわけです。少しでも効率よく作れるようにと日々考えているとは思いますが、製品の中身自体を工場の都合に合わせて変えるということは普通に考えてないですよね。極論を言うと、物さえ売れればものづくりはなんだっていいわけです。
ものづくりが会社にとって手段である限り、そこにはいろいろな選択肢が存在することになります。先に書いたように中で作るのをやめて外から買ってくるというのも手段の一つですし、会社経営を圧迫するのであれば多少無理をしてでも人を減らすという方法もあるでしょう。
そう考えると、生産技術が会社の都合によって翻弄されるのも不思議に思わないですし、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、生産技術によって会社のバランスを維持していると言えなくもないかもしれません。
でも、ですよ。
生産技術にだって意地があります。
ものづくりは手段でしかないのかもしれませんが、手段がたくさんあったり、それぞれの手段の質が高ければ高いほど目的を達成できる確率が上がる、というのも事実だと思います。いくらものづくりが手段だからといっても、手段の質を高めることを疎かにした会社は遠くない未来に衰退していくのではないでしょうか。
生産技術は手段の質を高めるための最も重要な位置にいると私は自負しています。
長い目で見て生産技術を高めることこそが会社の未来を助けるのだと思っています。
実際、生産技術という職種はとても広範囲にわたっての経験を積むことができるので、生産技術で活躍できる人は他の部署に行ってもだいたい即戦力として活躍できます。私のきわめて個人的な意見としては、新入社員をまずはいったん全員生産技術に配属すればいいとすら思います。先に述べた外の工場の実力を判定することだって生産技術であればできるわけです。そこである程度経験を積ませてから各方面に人を配置させていけば、それぞれの部署のレベルが今よりもっと上がるのではないかと思っています。
私としては、今現在はすでに生産技術の仕事をしていませんので、はっきり言って生産技術がどうなろうと直接的には関係ありません。ですが、どうせお荷物なんだからいやなら辞めてもらってかまわない、というような扱いをするのではなく、生産技術の人たちがもっと生き生きと仕事ができる環境を整えておかないと、近い将来きっと痛い目に会うと思っています。
私は長い間生産技術で仕事をしてきたからこそ、生産技術の悪いところも言えますし、良いところもわかっていると思っています。これからも生産技術の大切さと、楽しさを訴えていきたいと思います。
次は生産技術の良いところを記事にしたいと思いますので、お楽しみに😁
最後に本題とはあまり関係ないのですが、最近読んだオススメの本を紹介したいと思います。
以前、私の記事でもメモの大切さについて私の経験を基に紹介しましたが、とても上手にメモの大事さを説明してくれているのがこの本です。
私の記事は乱文で読みにくいかもしれませんが、この本は体系立ててメモの重要さや使い方を説明してくれているので、是非読んでみてください。
私もこの本に書かれているようなやり方を実践していて、このブログを書くのにも役立てています。モヤモヤとした考えをまとめるのにとても役に立ちますよ。
最後に自己紹介をさせてください。
私はこんな人です。
- 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
- 金属切削の生産技術歴 約20年
- 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
- インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級を持ってます
- Twitter、noteもやってます https://twitter.com/Shibakin_2019
- noteで高周波焼入れに関する記事を書いています
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