こんにちは。かこかと申します。
私は少し前に部署異動になり、今は第一線の生産現場からは遠ざかっていますが、かつては工場で間接スタッフとして働いていました。
工場で働いているスタッフであれば誰もが一度は味わうのが生産現場(以下、現場)とのいざこざです。もちろん、どんな職場であってもいざこざは存在するとは思いますが、現場から離れた別の職場で勤めた経験からあえて言わせてもらうと、工場のいざこざは少し他と異なると思います。
今回は工場で勤める間接スタッフが感じているストレスの原因と、それを解消するための提言をしたいと思います。
・現場とのコミュニケーションに困っている人
・工場間接スタッフとしての苦労を誰かと分かち合いたい人
・工場長に物申したい人
- 生産現場ってこんなところです
- なんであんたにそんなこと言われなあかんの?
- 見てきた世界が違う人が一緒に働くということ
- 工場長に物申す!!
生産現場ってこんなところです
現場が他の職場と違う点として、非常にルールが多く、それを厳しく守らせるということが真っ先に挙げられます。
どんな職場にだってルールはあると思いますが、工場の場合はその重要性が他とは大きく異なるというのが私の認識です。工場ではそこら中に危険な物が転がっていて、いい加減なことをしていると重大な事故につながる恐れがあります。それは働く人の体を大きく傷つけてしまうこともありますし、生産設備を壊してしまうこともあります。
人がケガをしてしまうというのは言うまでもありませんが、設備が壊れるということはお金を稼ぐための商品が作れないということであり、その分利益を獲得できないことになります。また、個人個人がいい加減な作業をすると不良品を作ってしまうことにもなります。不良品が世の中に出回るとお客さんに迷惑をかけてしまうことになります。これらのいずれも会社にとって重大な出来事です。気を緩めるとこのような問題が発生させてしまうという緊張感が工場には常に存在しているのです。
そういう事態が起こらないためにはルールを設定し、それを厳格に守らせる必要があります。この辺りのルールを守ることに対する厳しさや認識の違いは現場で働く人と他の職場で働く人との間にある大きな差です。現場以外で働いていた人が現場に来て、ルールの煩雑さに呆れる画面を何度も見てきました。私が他の職場を経験して改めて実感していることなので間違った感覚ではないと思います。
一方で私のいた生産技術(以下、生技)の仕事の多くは非定常作業です。決められたことだけをやっていては先に進むことができません。こういう環境で仕事をしていると、意味をなしていないルールというのが生産性を下げる理由になってくることが多くなります。したがって、時にはルールすれすれ(というか、破ることもある)の作業をせざるを得ないこともしばしばありました。
厳しくルールを守ることが求められる職場で働く人と、そのルールを守ることがストレスになる職場で働く人が近くで働かないといけないわけで、そうなるとその間には壁ができてしまうのはある意味、仕方がないことと言えるのかもしれません。異なる環境で働く人を1つのルール体系で管理しようとするのは非常に難しいことがわかります。
このようにルールを守ることの是非というのは議論の余地があるところだと思いますが、一方で、そんなことまでルール化しないといけないの?ということがよくありました。
たとえばですが
- 工場内の白線を踏んではいけない
- 作業をしているわけでもないのに帽子や安全メガネをかけないといけない
- 横断歩道を渡る時に左右を指さして確認し「ヨシッ!!」と言わないといけない
などです。
これらのルールは日本の工場では代表的なあるあるでしょうね。
作業をしている時に安全保護具を身に付ける必要があることはもちろん理解できます。ただ、そうでない時でもこれらを装着しないといけないことがしばしばあるのが工場の意味不明なところです。私が所属していた工場でも現場で報告会が開催されることがあったのですが、ただスクリーンを見て報告を聞いているだけなのに全員が安全メガネをかけることが義務付けられていました。安全メガネは異物が入ってこないように素肌に密着するような作りになっています。そのため、長時間装着しているとどうしても曇ってくるのですが、参加者の多くがメガネの曇りと格闘しながら報告を聞いている姿はなんとも滑稽な場面でした。
一度工場長に、報告を聞くだけの場ではせめて安全メガネを外させてほしい、と打ち上げてみたことがあるのですが、「現場で働く人に示しがつかない」というなんとも納得しがたい理由で却下されてしまいました。
安全や品質を守るためのルールではなく、守ることが目的になってしまっているルールもたくさんありました。ルールとはいえ、目的のよく理解できないルールによって生産性を落とされるのはたまったものではありません。
こんなルールでも守ることを厳しく指示されている現場の人たちがかわいそうに思えることもあるのですが、中にはルール遵守を盲目的に信じていて、それを他人にも求めてくる人がいます。
たとえばですが、こんなことがありました。
スタッフが机で仕事をしながら空腹を満たすために軽くお菓子を食べていたりすると、上司を通して現場から苦情が来たことがあります。
俺らは仕事中に何も食べられない、なのになんでお前らはお菓子を食べてるんだ?と。他の会社では空腹を満たすために軽食の自動販売機を置いているところもあります。仕事もせずにボリボリとお菓子を食べているならまだしも、軽くつまんでいる程度であれば常識的に許容されていると言えます。でも、自分たちができないからあなた達もそれに合わせてください、というわけです。
また、冬場にジャンバーを着てはいけない、という謎ルールもありました。私のいた事務所は建物が古いせいで夏は暑く、冬はとても寒いのですが、それでも仕事中はジャンバーを着てはいけないことになっていました。
なぜかというと、現場の人たちが着ていないからです。
ジャンバーを着ていたら作業の邪魔になったり機械に巻き込まれたりして危険である。だから現場の人はジャンバーを着られない。よって公平とするためにお前らもジャンバーは着てはいけない。そんな理屈です。でも、おかしなことに現場の方が暖房が効いていて快適だったりするんですけどね。確かにジャンバーを着れない人からすると不公平かもしれませんが、そんな理由でなぜ私たちまで寒さに震えながら仕事をしないといけないんでしょうか?
他にも、工場が停電になった時の話もあります。停電になると当然生産設備が停止してしまいます。そうなると現場の人はやることがないので設備の清掃などをしたりします。一方のスタッフはパソコンを使う仕事が多いです。停電になるとパソコンが使えなくなってしまいます。そのため電気が復旧するまではやることがなく、スタッフ同士で軽くおしゃべりをしながら復旧を待っていたのですが、どうやらそれが気に入らなかったようで、
俺たちは掃除しているのにお前らは遊んでいるのか!!
設備の掃除でも手伝いにくるべきじゃないのか!!
と現場のリーダーが怒鳴り込んできたこともありました。
私の事務所から現場が見れるようになっていたので、本当に停電中でも仕事をしているのかなと思ってその時の現場の様子を見てみると、ほとんどの作業者は仕事をするどころか仲間同士で楽しそうに話していました。大人げないと思ったので、このことはリーダーには言いませんでしたが・・・
このように、自分たちがこうだからお前たちも同じであるべきだ、という押しつけの感情はとても根深いものでした。これって本当の意味で平等と言えるのでしょうか?
みんなが同じ環境で同じ寒さを味わって同じような危険な目に逢う必要があるのでしょうか?
ひがみだとは思うのですが、こんなこともありました。夏場、現場で働いている人には脱水症状防止のためにポカリスエットが支給されるのですが、我々スタッフには支給がありませんでした。毎日ではないですが、私たちも長時間現場で仕事をしているにもかかわらずです。なぜここは平等にしてもらえなかったのかと不思議で仕方がないです。
なんであんたにそんなこと言われなあかんの?
押し付け平等の極めつけは人事評価についてです。
現場から私たちの職場にTさんが異動をしてきた時の話です。
彼は優秀な人材で、過去4年間ずっとA判定をもらっていました。そんな状態だったので異動してきたその年に昇格試験を彼に受けさせ、見事に合格しました。異動してきてすぐの昇格というのはもちろん私自身も違和感がありました。いくら過去の成績が良かったとはいえ、今の職場でまだ何も成果を出していない。そんな状態で昇格させてもいいものか、と。
聞くと、Tさんは現場でずっと良い成績を出してきたのにある理由で昇格させてもらえなかったようです。現場の場合、あるところまで行くと次の進路はリーダーになるしかないような人事制度になっていたんですね。Tさんは現場での仕事は優秀でしたが、リーダーになるには優しすぎるという理由で昇格をずっと見送られてきたとのことでした。昇格させるかどうかを判断するためにはいろんな評価軸があるので、そのような判断がなされていたことは特に違和感がある話ではありません。ですが、私の部署では環境が異なります。社内の人事ルールに従うと、今のうちにTさんを昇格させておかないとまた数年先まで昇格できなくなってしまうという状況でした。
異動というのは会社の都合でさせるものという側面もある以上、異動をすることでその人が不利益を被ってしまうのはあまりに不公平だ。
異動してすぐの昇格に違和感があるとはいえ、これまでの彼の成績を考えても昇格させることに問題はないだろう。
悩んだ末、私はこのように考えてTさんを昇格をさせることにしたわけです。
人事評価については別の記事にも書いていますので、そちらも読んでもらえるとなぜTさんを昇格させないといけなかったのかが理解していただけるかと思います。
そんなこんなで昇格したTさんですが、その結果をどこで聞きつけたのか、またしても現場から苦情が来ました。なんであいつを昇格させたんだ、と。
特に工場長からはかなりの剣幕で迫られましたが、その時の言い分はこうでした。
異動すれば昇格できるとなったらみんなが異動をしたがるだろ。
それじゃ製造現場は成り立たなくなる。
製造現場はお前らなんかよりよっぽど気を使って人事評価をしている。
余計なことをしてくれたら困る!!
夜中の事務所で工場長から怒られました。
最初、私は何を言われているのかがわかりませんでした。工場長の言う現場側の理屈が理解できなかったからです。
お前はわかってない、そんないい加減なマネージメントしてたらダメだ
と工場長は私に吐き捨てました。
ですが、こちらの事情も考慮せずに一方的に怒られてさすがに私も黙ってられなかったので言い返しました。
私たちには私たちの都合と権利がある。
何も考えてないと言われるのは心外だ!!
結局、お互いの主張は平行線のまま、工場長はブツブツ言いながら席に戻っていきました。
私だって迷いながらもいろんな事情があって判断したわけです。その背景を何も確かめもせずに、自分たちだけの論理でこちらの組織運営を非難してくるわけですから、素直に受け止められるはずがありません。工場長が言っていることがあまりに一方的であり、かつ、自分の主張が間違っているとも思わなかったので一歩も引くつもりはありませんでした。
このようなことが他にも何度もありました。
見てきた世界が違う人が一緒に働くということ
私は世間一般でいうところの製造技術や生産技術と呼ばれるような仕事を長年やってきました。
設計部署から下りてきた図面に基づいて、それを作るための設備や道具を準備し、それらの道具を使って実際に図面通りの物が作れるかどうかを確認した後、生産現場に受け渡すところまでを担当する職場です。現場での知識はもちろんですが、製品機能を理解している必要がありますし、適切な工法を設定するためにそれなりに高度、かつ広い知識が必要となる職場です。会社によっても違うとは思いますが、私の会社では大卒以上の社員が配属になる職場でした。
一方の生産現場の人たちというのは高卒の人がほとんどです。中には大学を卒業していったんどこかの会社に就職したものの、何かの理由で会社をやめて転職してきたというような人もいますが、新卒で現場に入ってきた人は私が知る限り100%高卒でした。高卒である現場の人の中にも優秀で、純粋で、素直な人はたくさんいます。ですが、高校を卒業したての若者が働く職場ですから、ヤンチャな人も多かったです。社会人なのに頭をまっ金金に染めてくる人や無精ひげがボーボーの人、違反改造バリバリのバイクで通勤する人もいましたし、上司の言うことを素直に聞かない連中もいました。
学歴だけで人の優劣を判断するのは賢いやり方でないことは承知しています。ですが、大卒と高卒だと会社に入ってくるまでに生きてきた人生観が決定的に異なります。また、多くの場合その人生観は生涯を通じてその人の価値観に影響を及ぼす、というのが私の持論です。
大卒の人は、行っても行かなくてもどちらでもいい大学に行くという決断をした人たちです。もちろん、ただなんとなく大学に進学した人もいるでしょうけど、大学に進学するには相当なお金が必要になります。多くの人にとって親や親族からの支援が必要になるでしょう。また、受験勉強は過酷です。他の人が遊んでいる時でも一日何時間も机に向かう必要があります。夢や目標など何かしらのモチベーションがないと簡単には取り組めません。したがって、大学に行くには周囲の人たちや自分自身を納得させられるだけのそれなりの理由を準備する必要があります。
また入学後もアルバイト先の店長や社員さんとバイトのシフト交渉をしたり、単位を取るために大学の教授と研究テーマについてディスカッションをするなど、社会に出る前に社会人と接する訓練を受けています。先述の通り、大学は義務教育ではありません。子供のようにわがままを言って大人を困らせる言動を取ったところで誰もかまってくれず、そこに付いていけない人は脱落していくしかありません。大卒の人たちは曲がりなりにもそういった課題をクリアしてきた人たちだと言えます。
このような人と比べると、やはり現場で働く人には幼稚な人が多いと言わざるを得ません。そして幼稚な人は理屈や倫理観に訴えても効力がないため、彼らを管理するためには力ずくで聞かせるしかないわけです。
生産現場の親分的立場の人はヤクザまがいのド迫力の人が多いです。私はなぜこんなにも声のデカい人たちが現場の親分に多いのだろうと不思議に思っていたので、ある時現場の人にその理由を聞いたことがあります。その人が言うには、言うことを聞かない若者にナメられないようにしてるんだよ、とのことでしたが、この答えを聞いて妙に納得したものです。
幼稚な人の特徴として自分のことを棚に上げて他人に多くを要求するというものがありますが、このような人にとって真面目に勉強をしてきて素直な大学生(特に工場の場合はコミュニケーションが苦手な理系男子が圧倒的に多い)は格好のカモであり、搾取ともいえるような無理難題を押し付けてくるわけです。そこでうまく立ち回れず、また周囲からの支援を受けられなかった人は現場での仕事になじめなくなってしまいます。コミュニケーションをうまく取れないのが悪いと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、頭がいいのにその特長を生かせずに会社を辞めていったり、ダメなやつというレッテルを貼られて異動していった人もいます。もったいない話だと言わざるを得ません。
また、このような人は屁理屈だけは立派に主張しますので、それに対抗するためには普段から必要以上に神経を尖らせておく必要があるのも理解できます。したがって先述のように、工場長がTさんの昇格に対して神経質とも思える理由で私を非難してきたのも頭では理解できます。気持ちの面と、組織の維持の面ではとうてい納得できるものではありませんでしたが・・・。
繰り返しますが、学歴だけで物事を断ずるのは短絡的な考えです。ですが、ここで書いていることは一般論としては成立している考察であると思っています。
工場長に物申す!!
ここまでのことを踏まえて、生技の立場から工場長に対してお願いしたいことを書いておきたいと思います。
私の会社の場合、現場のトップ、つまり工場長には生技の出身者が就くことがほとんどでした。私も年を取りましたので、昔からよく知っている人、一緒に仕事をしてきた先輩方が工場長のポジションに就くようになってきました。彼らも生技をやっているころは現場とのいざこざに苦労されられていたので、時には文句を言っていることもありました。
それなのに、彼らは工場長になった途端に漏れなく現場寄りの言動を取るようになるんです。報告会の場でも、現場の人が報告をすると手放しで褒めたりポジティブな評価をするのですが、一方で生技に対しては不足しているところばかりを挙げつらい、ほとんど褒めることもありません。裏ではどのようなことを言っているかは知りませんが、生技に対してはいつも厳しいことしか言わないくせに、表立っては決して現場の人を悪く言うことはありません。
ただ、そうなる理由もわからないわけでもありません。例えばこのような理由が挙げられると思います。
- 自分の出身母体である生技に対して文句を言いやすい
- 工場にある設備や工具など、生産で使う道具のほとんどを準備したのが生技なので生技起因で発生する問題が多い。そのため、生技でないと解決できない問題が多く、要求が厳しくなる
- そもそもの立場上、現場のトップだから現場寄りになる
それともう一つ考えられるのが、
寄り添ってあげるような発言をしないと一気に現場で働く人の心が離れていくから、
という理由です。
ここまで説明してきたように、現場で働く人の性格上、こういう側面があるんだろうなと想像しています。現場の人たちは上の人を良く見ています。現場は縄張り意識が強い文化を持っているので、たとえ工場長であっても自分たちの文化を尊重しない人には付いていこうとしません。
現場で働く人から良く聞くのが「〇〇さんはよく△△してくれた」「〇〇さんは良く自分たちの話を聞いてくれた」というセリフです。もちろん、自分に対して良くしてくれた人のことを好むのは誰しもが持つ感情だとは思いますが、指示や考え方が論理的であるかどうかよりも、感情を基準として人を評価する雰囲気が他の職場よりも強い、というのが私の見立てです。
そうなると、本心はどうあれ、工場長が現場の人の機嫌を損なわないような発言をするようになるのも無理はないと思いますし、論理的に物事を考えるのが得意であり、少々きつくあたっても文句を言わない生技への対応が厳しくなるのも理解はできます。
生技を依怙贔屓してほしいと言いたいわけではありませんが、生技で働く人にだって感情はあります。褒めてもくれず、厳しいことばかりを言われているのに高いモチベーションを維持しろと言われても土台無理だと言わざるを得ません。
工場長が生技に厳しく当たるのは期待と希望の裏返しであることは理解しつつも、もう少しやる気を持たせてくれるような言動を心がけてもらいたい。それが私から各工場長に対するお願いです。
最後に自己紹介をさせてください。
私はこんな人です。
- 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
- 金属切削の製造技術歴 約20年
- 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
- インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級を持ってます
- 現在、本を執筆中です
- Twitterもやってます https://twitter.com/Shibakin_2019
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