仕事

どんくさい部下こそかわいがれ

私は1月に今の部署に異動しました。

異動をするにあたって業務の引継ぎを行うのですが、
前任者からイヤな引き継ぎ方をされた部下がいます。

今回はその部下について書きたいと思います。

  1. こいつには気を付けた方がいい
  2. 実際に会って話をしてみたら・・・
  3. 正面から向き合うのではなく、寄り添ってあげる

 

こいつには気を付けた方がいい

 

「こいつには気を付けた方がいい」

前任者から引継ぎを受けた時に言われた言葉です。

異動をする場合、継続している業務の内容や業務の手順など、
様々なことを引き継ぎますが、一番話が盛り上がるのがやはり、
人に関する情報の引継ぎです。

新しい部署に異動する場合、どんなメンバーがいるのか、ということを知らない場合が多いと思います。

私も何人かは知っている人がいましたが、半分以上の人は知らない人でした。

ですから、前任者から一人一人の特徴を詳しく聞き出そうとしました。
できるだけスムーズに人と交流を開始するには事前情報があった方がいいですからね。

何人かいる部下に対して順番に人柄や仕事ぶりを紹介してくれましたが、
最後の一人を紹介する時に発せられた言葉が冒頭の言葉です。

いわく、頭はいいんだけど自分から動くことができない性格である、とのこと。

これから先、成長も見込めないから博士号でも取らせてあげて花道を作ってあげるくらいしかない、ということを言われました。

私も20年くらいのサラリーマン生活の中でいろんな人を見てきたので、
なんとなくは想像できましたが、残念ながら悪いイメージで引継ぎをしてしまいました。

実際に会って話をしてみたら・・・

私はこれまで何度か部署異動をしてきました。

一担当者であった時は一度だけの異動でしたが、課長になってからは3回目の異動になります。

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私は新しい部署に来たら必ず真っ先にメンバーと1対1の面談をすることにしています。
これまでも必ずそうしてきました。

仕事をするのが人である以上、部署を構成しているメンバー1人1人がどういう人格を持っているのかを知ることが何より重要であると思っているからです。

今回も同じように個人面談から開始しました。

そして例の「気を付けろ」と言われた部下の面談の場になりました。

Y君としましょう。

Y君に会って話をしてみると、風貌からして頭が良さそうな雰囲気です。
噂に違いはありませんでした。

聞いてみたら、やはり名門大学を出ているとのこと。
物静かな感じで、いかにもマジメ、という雰囲気です。

その時に感じたY君の私の印象は

  • 慎重な性格である
  • 不器用である
  • 優しい

というものでした。

噂通りのところもありましたが、もっと気難しい性格かなと思っていたので、
案外優しそうなやつだな、という印象が特に強かったです。

それから約1か月、Y君の仕事ぶりを見てきましたが、確かに考え込んでしまってまずは動いてみるということが苦手な性分であることはわかりました。
ですが、引継ぎを受けた時のようなネガティブな印象はその後も一度も受けたことはありません。

なぜかというと、

こりゃなんとかなるぞ

と思ったからです。

苦手なことは誰にでもありますが、逆に言うと得意なことだって誰にでもあります。

頭ごなしに「こいつはダメだ」と決めつけられて、
適切な指導をちゃんとしてもらえなかったんじゃないか、と感じました。

というか、指導する手法をこれまでの上司が持っていなかったんだろうなと思いました。

前任者とは付き合いも長いのでだいたいどういう人かは知っていたのですが、
ちょっと古い考えの人だなあと以前から思っていたので、どちらかというと

頭を使わなくてもいいから要領よく動いてくれる人

を好む傾向があるように以前から感じていました。

さらにY君のその前の上司も指導力がないという評判をよく聞く人でした。
恐らくですが、ぱっと見だけでY君の可能性を決めつけてしまい、
指導すること、可能性を見つけてあげることを放棄してしまっていたんじゃないかと私は感じています。

正面から向き合うのではなく、寄り添ってあげる

私がY君に可能性を感じて、簡単に見放すことはできないと感じた理由は、
Y君が意欲的に仕事に取り組むからです

不器用ながらもまじめに取り組むんです。

中には言い訳ばかりだったり、人のせいにして自分を正当化しようとする人もいますが、
Y君はそうではありませんでした。

そうなるとY君を助けないわけにはいきません。
Y君はもう40歳になるおっさんですが、私からみるとかわいい部下なんです。

まず私がやったことは、Y君の話をよく聞くことでした。

なぜY君がそのように考えるのか、それを必要と考えるのか、根掘り葉掘りと聞きました。
Y君もその質問に対して時には言葉を選びながら、丁寧に答えようとしてくれました。

Y君は頭がいいだけに、1つのことに対していろんなことが心配になってしまう性格であることがわかりました。

もっとシンプルに考えればいいのに、難しく考え過ぎてしまい、頭の中が混乱してしまって行動に移れなくなっているのでしょう。

あと、どうしても一つのことに対して深く掘り過ぎてしまう傾向があったので、私がやる範囲を決めるように促すこともありました。

もちろん、無理やり決めることはしません。

私はこう思うからまずはここまでやってみればいいと思うんだけど、それで納得できるかい?

という具合に、彼の意思を尊重しながらも、思考を整理してあげるように努めました。

そういう私の行動を嫌がるかなと最初は心配しましたが、思ったよりスッキリした顔をしていて、動き出せるようになったようです。

次にやったことはY君の強みを生かせる環境づくりです。

Y君が過去に所属していた職場の人たちとコラボレーションできる環境を作り始めました。
自分が手を汚して作業をしてきた職場だったので、確実に他人よりも知識は持っています。
そして、過去の人脈を使って仕事をするように仕向けました。

Y君は、自分がこう言ったら相手はどう感じるだろうか、
ということをよく考えるので、とても慎重なんですね。
誰に対してもきちんと説明しようとしてくれます。

ですが、それが裏目に出てしまって、
説明が長い、わかりにくい、情報量が多すぎる、
というような指摘を受けることがあり、
それによって人付き合いもうまくいっていないところがありました。

ですから、彼が一番普通に過ごせる人たちと一緒に仕事ができるようにすればいいかも、
と思って、そのように仕向けてみました。

この時もY君は私の言うことに対して素直に取り組もうとしてくれました。
動き出せないわけじゃなく、動き方がわからないだけだったのかもしれません。

まだ良いテーマは見つかっていませんが、彼の強みを発揮できるようなテーマを
一緒に見つけてあげたいと思っています。

私のやり方が良いのかどうかはわかりません。
もっと良い方法もあるとは思いますが、今のところはこれで様子を見てみたいと思っています。

上司というのは部下と正面から対峙してはダメなんだと私は思っています。

正面から見るとどうしてもいろんなことを言いたくなるし、注意もしたくなる。

部下の言動を評価するという面が強くなってしまいます。

そうではなくて、部下の横に並んで、少し腕をつかんで支えながら、同じ方向に向かって一緒に歩いてあげることが必要だと思っています。

私は正面から君を見ているという言動は、上司からすると部下と真剣に向き合おうとしている意思だと思います。
ですが、今目の前にいる部下はそれを望んでいるのでしょうか?

無理に引っ張られるのをイヤがっていたりはしませんか?
じっと見られていることに恐怖心を感じてはいないでしょうか?
良かれと思ってやっていることが、俺の言うとおりにやってみろ、俺の価値観に合わせろ、
という無言のプレッシャーを与えていたりはしないでしょうか?

ましてや、思ったように動かない部下、思ったように伸びない部下を、こいつはダメだと言って切り捨てたりはしていないでしょうか?

たとえそれが無意識であったとしても、です。

万人に効く指導法というのはないでしょう。
私自身も甘すぎるのかも、と思うこともよくありますし、何が正解かなんてまったくわからないので教えて欲しいくらいです。

ですが、少なくとも対峙するのではなく、横にいて同じ方向を向こうとするというのは汎用性の高い指導法?だと思っています。