仕事

私が経験したパワハラ上司

今日は最近読んだ本の紹介も含めながら
パワハラについて書いてみたいと思います。

私は入社以来、特にパワハラで悩んだことはありませんでした。

以前も登場しましたが、製造現場にイヤなおじさんがいましたが、
この人は私の上司ではなかったので、正確にはパワハラではないですよね。

異動について振り返ってみた そして、考えてみた 私はこの今月から新しい部署に異動しました。 この件はこのブログの中でも何度か書かせてもらっていますが今回はサラリーマン...

ですが、インドネシアから帰ってきた最初の上司が初めて
「あ、これがパワハラなのかな」
と思うような言動がある人でした。

たぶん、これくらいのことはどこにでもある話だと思いますし、
メンタルダウンしてしまうほどパワハラで悩んでおられる方に比べれば
大したことはないと思います。

ですが、少しずつに私の心を蝕んでいたという実感はありました。

そのあたりのことを今日は書いていきたいと思います。

  1. パワハラがなぜ怖いのか
  2. 『怒られる』とパワハラの違い
  3. 私が実際に経験したパワハラ上司

パワハラがなぜ怖いのか

パワハラについて最近読んだ本を紹介しておきます。

タイトルにもありますが、著者のわびさんは元エリート自衛官で、
どこにいっても常にトップの成績を上げるような優秀な自衛官だったようです。

ところがある時、上司から強烈なパワハラを受けたことによってメンタルダウンしてしまいます。

また、そこから復活して以前よりものびのびと仕事ができるようになるまでの話が書かれています。

優しい感じの文章ですのでとても読みやすい本です。

わびさんは上司のパワハラがひどすぎて、何に対しても上司から叱責を受けたそうです。
子供の名前を決めるのにまで文句を言われ、しまいには自分が自動販売機で選ぶコーヒーの種類ですら文句を言われるんじゃないかという恐怖感を感じるようになったそうです。

そこまで追い込む上司の気持ちというのはどういうものなんだろうかと思います。
パワハラで悩んだ経験を持つ方の本や記事はたまに読みますが、
パワハラをしたことがあり、その理由を語った記事というのは私は読んだことがありません。

本書の中で語られるパワハラ上司の特徴はこういう物です。

自分に大した能力がないので、自分の優位性を示す方法がパワハラしかないのです。
そして、自分の正当性を守るために周りを同調させます。

本書の中に出てくる上司は誰が見てもわかるような強烈なパワハラ上司です。

大きな声で叱責したり、やたらと厳しく仕事を評価するなど、
噂になるレベルの人もいますが、
実は本人や周りには気づかれなくても密かにパワハラをしている人はいると思います。

きっかけは小さいことであっても、それが続けば人の心を壊すだけの十分な破壊力を持つ。
それがパワハラの怖いところですよね。

しかも、上司というのは仕事を進めるうえで避けて通れる存在ではありません。
好む好まざるに関わらず、はんこをもらわないと先に進めませんからね。

『怒られる』と『パワハラ』の違い

ちょっとここで確認をしておきたいのですが、
上司から「怒られる(叱られる)」のと「パワハラ」の違いってなんでしょうか?
どちらも自分に対して上司が文句を言ってることに変わりはないのですが、
その違いとはいったいなんでしょうか?

私なりの答えを書いておくと、

  • 怒られる(叱られる) = 怒られた(叱られた)理由が理解でき、それに対して反省、言動の見直しができる
  • パワハラ = なぜ叱責されるのかが理解できず、ゆえに反省も言動の見直しもできない

ということじゃないかと思っています。

たとえば仕事でミスをしてしまった。
前にも注意されていたのにそれを忘れてしまってミスをしてしまった。
結果、上司や先輩から怒られた。

これなら怒られた理由がわかりますよね。
自分に非があることを理解できますし、
今度はミスをしないようにメモをしようとか、
あらかじめ準備をしておこうとか、
再発防止に向けて言動の見直しができます。

一方のパワハラはどうかというと、それができません。

本書で出てくるような自分の正当性を強調したいだけの叱責ですから、
なぜ怒鳴られているのかが理解できないんです。
理解できないからこそ自分の言動を見直すこともできません。

そうなってしまうと、その都度その都度、ああ、また何か言われるんだろうなあ、
また俺のせいにされるんだろうなあ、
と考えてしまうんです。

著者のわびさんが缶コーヒーの種類すら選べなくなってしまったのも理解できます
(苦しんでいる人のことを軽々しく理解できるなんて言えないですけどね)。

私が実際に経験したパワハラ上司

私が実際に経験した上司の話をしたいと思います。

インドネシアから帰ってきてから私の上司になった人です。
Aさんとしましょう。

このAさん、実は私も前から知っていて、話をしたこともあったのですが、
なんとも話がしにくい人だなあ、という印象を持っていました。

また、Aさんは他の会社から今の会社に転職をされてきた人なのですが、
前職の頃からAさんのことを知っている人がいました。
この人からAさんの噂を以前から聞くことがありました。
総じていうと、ポンコツである、ということは理解していました。

また、私に帰任することを伝えたインドネシア時代の上司からは
「日本に帰って困ったことがあったらAに相談すればいいから・・・
んーー、でもAはちょっとなぁ・・・
そうだ、Bさん(Aさんの上司であり、私の2つ上での上司にあたる)がいるから
Bさんに相談しなさい」
と言っていました。
その時は苦笑いするしかなかったのですが、とにかく、上司になる前から印象は
あまりよくありませんでした。

実際にAさんと仕事をし始めたわけですが、同僚からも
「Aさんはなぁ・・・」
「まあ、Aさんだから仕方がないよ・・・」
「Aさんに期待しても仕方がない。期待するお前が悪いよ」
なんてこともよく聞かされました。

私が持っていたイヤな予感がどうやら的中したようです。

当初はそれほどイヤでもなかったんです。

たぶんですが、Aさんは大きな声で怒ったりするような人ではなかったからです。
だから、いきなり精神的に追い込まれるようなことはありませんでした。

ですが、すこしずつAさんが本性を現してきます。

Aさんは前職での経験が豊富だったことや、そもそも機械が大好きなこともあり、
現場主義者でした。
現場主義者というと聞こえはいいのですが、加工点への興味が強すぎるんです。

加工点というのは、たとえば設備の中で物を削ったり叩いたりして形作っている点のことです。

簡単に言うとAさんはマニアであり、加工点以外のことに対してはあまり興味がない人でした。

担当者であればそれでも問題ないと思うのですが、
相手はそれなりの地位のある人です。
いわゆる人やお金を最大限に活用するような仕組みを作るべき人なのに、
加工点のことばかりを言うんですね。

だからこの人のマイクロマネジメントには本当に困らせられました。

口を出さないで! マイクロマネジメントを考えるサラリーマンであれば一度は悩む上司問題。 私も多分に漏れず、悩んだことがあります。 入社以来、今まで上司は7人いたかな。 ...

一番困ったのは相談に乗ってくれないことでした。

とにかく製造現場というのは人とお金が足りないんですね。
人を取ろうにもお金がない、お金を要求してもお金をもらえない。
そんな状況でした。

ですが、仕事量が多かったために残業はかさばっていくし、
新しい製品を作る道具を買うためのお金もまともにありません。

それでAさんに相談をするんですが、いつも話がころころ変わるんです。

人がいないからなんとかしてほしい、どこかから取ってこれないか、
相談したところ、リクルート活動をするのもお前(私)の仕事だろう、
というのですね。

私も日本での管理職経験が多くなかったので、そんなものかと思って人を探しました。

そして、なんとか人を探してきたのでこの人を取ってきたいと申し出ました。

するとAさんは「予算はあるのか?」と聞いてきます。

Aさんはうちの部署が予算が足りないことは十分に知っているんですね。
そのこと知ってますよね?って思いながらも、「ありません」と答えると、
与えられた予算の中でやり繰りするのがお前の仕事だ、というわけです。

いや、そうなのかもしれないけど、最低限の仕事をするためのお金すら不十分だと言ってるのに、
新しく人を取ってくる予算を捻出できるわけないじゃないか、
と思うわけですが、それがお前の仕事だろう、と言われてしまえばそれに従うしかありません。

それからも何度も人の要求をしてきて、このような会話を何度か繰り返してきたのですが、
最終的には派遣社員を1名採用するための予算を付けてくれました。
その時の言い分も、だから前から人を取ってこいと言ってるだろう、
人を探してきもせずに人がいないばかり言っててもダメだ、
というようなことを言われるんですね。

私はちょっとしたパニックになりました。

まさにパワハラの定義でいうところの
自分の何が悪いのかがわからない
という状態でした。

このようなことがなぜ起こったのかというと、お金がないというのが大きな原因としてありました。

そりゃ、潤沢な予算で仕事ができることなんてほぼないでしょう。
ですが、仕事量に合わせて必要な予算を請求し、最低限の予算を付けてもらうことができなければ、それはまた違う話になります。

私が所属していた部署というのは代々お金の管理が下手な部署で、
過去の記録があまり残っている状態ではありませんでした。

昔はそれでもある程度お金がもらえていたので問題にはならなかったのだと思いますが、
最近はカツカツの予算しかもらえない状態になっていました。
過去の総額履歴だけは調べられたので調べてみたのですが、
昔は「こんなに!?」っていうくらい予算がついていました。

私が担当者だった頃も、違う部署ではありましたけど、
それほど予算で苦労することはありませんでした。

ですが、予算履歴を見ていくと、毎年のように削減されていっていました。
私がインドネシアにいた数年の間に予算割り振りの様子が変わってしまったようなんです。
しかも、予算の組み方自体が仕事量に合わせた形ではなく、
前年の実績からみて〇%一律カット、というような形になっていました。
つまり、今年はいっぱい新製品があるという年でも、その前の年の予算が少なければ
そこから増やしてもらうことができないような状態だったんです。

また、私が担当していた部署は、新製品が多い部署でした。

他の部署では新製品が発生していないような場合でも、私の部署だけは発生していたりするんです。
それは私たちの部署の製品の性質上、避けられないことだったんです。

そのこともAさんには理解してもらえませんでした。

理論的にデータを使って説明しようとしても過去のデータもない。
前任者に聞いてもわからないと言うし、そもそも予算組みで困ったこともない、
なんでお前はそんなに騒いでいるんだ、という感じの返事しかもらえませんでした。

部下から欲しい金額を聞いてAさんに訴えても
「どうせ多めに言ってるだけだろ?」
「どうせ予算のキャップは決まってるんだから、
その中でやり繰りするしかないんだから。」
ということしか言われません。

正当に請求しても取り合ってもらえない。
それを証明するだけのデータも準備できない。

どうしてよいかわからなかった私は、結局Aさんの言われたとおりに予算を組みました。
もともと私がいた部署でなかったこともあり、それだけの予算で足りるのかどうかが
感覚的にも理解できていなかった、というのもありますが、
予算を組んだ時点でもう予算不足になるのは明らかだったのです。

そんな予算を組んでしまったのは私の力量不足も確実にあるとは思います。
ですが、私なりに文句を言わせてもらうのならば、
何を言っても取り合ってもらえないし、いつも論点をすり替えられるので
結局は自分の責任として引き取るしかない状態に追い込まれる、ということでした。

挙句の果てに、Aさんからは
「新製品が発生するのはお前がちゃんと交渉しないからだ」
なんてことも言われました。

たかが工場の一課長が新製品の内訳を決めることなんてできるわけもないのに・・・

Aさんからすれば、もしかしたら私の話がわかりにくかったのかもしれません。
それは認めるところもあります。

ですが、複雑に絡んだ糸を紐解こうと苦しんでいて、助けを求めている私に対して
Aさんはそれをあざ笑うかのように私のせいにしてきました。

いつも結論を短絡的に決めつけ、そしてその結論を毎回忘れる。
Aさんは本当の意味で私たちの苦しみを知ろうとはしてくれませんでした。
自分が知らないのはお前らがちゃんと報告してこないから悪い、という態度です。

そのくせ、私たちが相談し、誰かと一度話をしてみてもらえませんか、
というお願いをすると、それは俺の仕事じゃない、お前の仕事だ、
といつも突っ返されました。

私が言っても変わらないからお願いしたのに・・・

大声で叱責するようなことはありませんでしたが、
私は自分のどこが悪いのかがわからず、いつも苦しんでいました。

Aさんから言われた
「それができないならマネージャーは要らない」
というセリフが今も耳に残っています。

それは、なぜ残業がそんなに多いんだとメールで聞かれた時のことです。
私が事実を伝え、とにかく仕事量に対して人がいないのだ、
ということを返事しました。
そうするとAさんは
「それをなんとかするのがお前の仕事。
それができないならマネージャーはいらない」
と返信をしてきました。

あまりに頭にきた私は、
「聞かれたから答えただけです」
と返信をしました。

それっきりAさんからの返信は来ませんでしたが・・・

私からしても、じゃあAさんの仕事は何なんですか?
と聞きたい気持ちはありました。
なので、何度かAさんに反論をしたこともあります。

ですが、そういう時はいつもAさんは何も返事をしてくれませんでした。

わびさんほどではありませんが、何を言っても理解してもらえない、
という恐怖があったのは事実です。

このような状態が1年半ほど続きました。
私は毎日のようにAさんがどこかの部署に行ってくれることを祈っていました。
できるだけAさんとは話したくないと思っていました。

そうしているうちにAさんではなく、私が部署異動をすることになりました。
移動の背景や内容はともかく、Aさんの部下でなくなったことは私にとって喜びではありました。

ですが、新しい部署に移っても全部がハッピーかというとそうでもないんです。

というのも、Aさんの時に感じた恐怖が頭の中に残ってしまっているんです。

あれをやったら怒られるんじゃないだろうか、
また何か文句を言われるんじゃないだろうか、
という感覚が今でも抜けていなくて、
自分でも考え方に変な癖がついてしまっていることを実感しています。
これはしばらくは続いていくんじゃないかなと思いますが、
じきに治っていくのかなと期待しています。

パワハラというと大声で大勢の前で叱責されたりするのをイメージします。

私はそういうことはなかったのでまだマシなんだろなとは思いましたが、
こういうパワハラの形もあるんです。
毎日のストレスというのは、たとえそれが典型的なパワハラの姿をしていなくても、
部下の脳みそにちょっとした障害を残してしまうんです。

本当に上司の人たちは部下に対する言動には細心の注意を払ってもらいたいと思います。